地方創生という名の税金の無駄遣い
地方創生は美しい響きを持つ政策スローガンだ。しかし、その実態は税金を使った壮大な無駄遣いプロジェクトに他ならない。
──── 10年で26兆円の投資効果
2014年の地方創生戦略開始以来、関連予算は累計で26兆円を超えている。
この巨額の投資に対して、人口減少は止まったのか。地方経済は活性化したのか。若者の流出は改善したのか。
答えは明確だ。すべてNOである。
人口減少率は改善していない。地方の経済規模は縮小を続けている。東京一極集中は加速している。
26兆円という金額の重みを理解しているだろうか。これは防衛費の約5年分、教育予算の約4年分に相当する額だ。
──── 構造問題を無視した対症療法
地方衰退の根本原因は明確だ。
産業構造の変化、人口動態の変化、グローバル化の進展、技術革新による効率化。これらは不可逆的な構造変化だ。
しかし、地方創生政策はこれらの構造問題を無視し、表面的な対症療法に終始している。
観光振興、6次産業化、移住促進、起業支援、ブランド化。これらの施策は、根本的な競争力不足という問題に対する応急処置に過ぎない。
構造変化に逆らうことは、津波に向かって手で水をかき分けるようなものだ。
──── 補助金依存の悪循環
地方創生予算の大部分は、結果として地方自治体の補助金依存を深刻化させている。
自治体は補助金獲得のために、実現可能性の低いプロジェクトを企画する。コンサルタント会社が美しい計画書を作成し、形式的な審査を通過する。
プロジェクトは開始されるが、継続性がない。補助金が終われば、事業も終わる。
結果として、地方の自立性は向上せず、むしろ中央政府への依存が強化される。
これは麻薬のような構造だ。一時的な効果はあるが、長期的には依存症を悪化させる。
──── 成功事例の錯覚
政府や自治体は常に「成功事例」を強調する。
ある町の観光客数が増加した、ある市の移住者数が増えた、ある村の特産品が売れるようになった。
しかし、これらの成功は持続可能なのか。補助金なしでも継続できるのか。近隣自治体から観光客や移住者を奪っただけではないのか。
多くの場合、成功事例は一時的な現象か、ゼロサムゲームの結果だ。全国レベルで見れば、地方衰退の根本的解決にはなっていない。
統計的に有意な改善を示している事例は、皆無に近い。
──── 利権構造の温床
地方創生予算は、新しい利権構造を生み出している。
コンサルタント業界は地方創生バブルに沸いている。計画策定、事業管理、効果測定、すべてが外部委託され、巨額の手数料が発生している。
地方議会や首長にとって、地方創生は格好の政治的アピール材料だ。「国から予算を獲得してきた」という実績は選挙で有効だ。
中央官僚にとっても、地方創生は予算拡大と天下り先確保の機会だ。
結果として、政策の効果よりも、政策の継続自体が目的化している。
──── 機会費用の巨大さ
26兆円を地方創生以外に投資していれば、何ができたか。
教育投資による人的資本の向上、インフラ整備による生産性向上、研究開発投資による技術革新、社会保障制度の充実による社会安定性の向上。
これらの投資は、地方創生よりも確実に経済効果を生み出したはずだ。
特に教育投資は、長期的な競争力向上に直結する。優秀な人材が育てば、彼らが地方を活性化させる可能性もある。
地方創生という名目で、より効果的な投資機会を逸している機会費用は計り知れない。
──── 現実的な代替案
地方衰退を完全に止めることは不可能だが、より効率的なアプローチは存在する。
まず、衰退する地方への投資を縮小し、成長可能性のある地域への集中投資に転換する。すべての地方を平等に支援するのではなく、選択と集中が必要だ。
次に、人口減少を前提とした社会システムの構築。インフラの統廃合、行政サービスの効率化、デジタル化による距離の克服。
最後に、労働力の流動性を高める政策。移住支援よりも、必要に応じて移動できる社会システムの構築が重要だ。
──── 政治的現実との乖離
しかし、これらの現実的な政策は政治的に困難だ。
「地方を見捨てる政策」として批判され、選挙で不利になる。地方選出議員にとって、地方創生予算の削減は政治生命に関わる問題だ。
結果として、効果のない政策が政治的理由で継続される。
これは民主主義の限界の一つだ。合理的な政策よりも、政治的に受け入れやすい政策が選択される。
──── 沈没船への注水
地方創生は、沈没しつつある船に水を注いでいるようなものだ。
注水によって一時的に船は安定するが、根本的な浸水は止まらない。むしろ、注水によって沈没が加速する可能性すらある。
26兆円という巨額の資金を、より有効な用途に振り向ける勇気が必要だ。
それは政治的に困難だが、長期的な国民の利益を考えれば不可避の選択だ。
──── 既得権益との戦い
地方創生政策の転換は、既得権益との戦いを意味する。
自治体、政治家、官僚、コンサルタント会社、すべてが現状維持を望んでいる。
しかし、納税者の利益を考えれば、この既得権益構造を打破する必要がある。
効果のない政策への批判を「地方軽視」として封じ込める言論の構図も、変える必要がある。
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地方創生という美名の下で行われている税金の無駄遣いは、いつまで続けるのか。
政治的な美辞麗句ではなく、数字に基づいた冷静な政策評価が求められている。
26兆円の投資に見合う成果が出ていない以上、政策の根本的な見直しは避けられない。
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※本記事は政策分析を目的としており、特定の地域や団体を貶める意図はありません。建設的な政策議論を促進する目的で書かれています。